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宇宙に飛ばされたライカのことを思えば、我々の不幸なんてどうってことない

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1958年4月14日、米国東海岸からカリブ海にかけて、一筋の流れ星が目撃された。それは想像を絶するスピードで飛行し、明るく輝き、間もなくいくつかの断片になり、様々な色に輝きながら、夜空へ消えていった。

有人宇宙飛行の生贄として召されたライカという犬を乗せたスプートニク2号の片道飛行の最後であった。

 

その後も生物打ち上げ試験は続き、犬が無事帰還できるまでになったスプートニク5号に続いて、今度は人間を乗せたボストーク計画が始まり、ボストーク1号でユーリ・ガガーリンが人類初の宇宙飛行を達成した。地球を一周するわずか108分の飛行で、大気圏突入後ガガーリンは高度7000Mで脱出カプセルで放り出された命がけの飛行であった。

ボストーク2号は宇宙に25時間滞在。3号と4号は地球周回飛行中にランデブー飛行し5キロまで接近した。同様に5号6号は今度は4キロまで接近した。

ボストーク6号でには初の女性飛行士ワレンチア・フルシコアが搭乗し、ヤ―チャイカ(私はかもめ)という交信が有名になった。

※チャイカ(かもめ)は彼女のコールサインである。

 

 

ライカの正確な記録はソ連崩壊後の2002年に、関係者によって明らかになった。

そして驚くことにライカ同様に星になった女性飛行士が存在したという説がある。

 

Lost Cosmonauts - Wikipedia

宇宙船名打上年月日飛行時間
(地球周回数)
宇宙飛行士コールサイン備考
ボストーク1号 1961年4月12日 1時間48分
(1周)
ユーリイ・ガガーリン Кедр
ヒマラヤスギ
人類初の有人宇宙飛行
ボストーク2号 1961年8月7日 1日1時間18分
(17周)
ゲルマン・チトフ Орёл
ワシ
 
ボストーク3号 1962年8月11日 3日22時間22分
(64周)
アンドリアン・ニコラエフ Сокол
ハヤブサ
 
ボストーク4号 1962年8月12日 2日22時間56分
(48周)
パベル・ポポビッチ Беркут
イヌワシ
 
ボストーク5号 1963年6月14日 4日23時間7分
(82周)
ヴァレリー・ブィコフスキー Ястреб
タカ
 
ボストーク6号 1963年6月16日 2日22時間50分
(48周)
ワレンチナ・テレシコワ Чайка
カモメ
女性初の宇宙飛行

 

 アキリとジョバンニのユディカ・コルディーリア兄弟によると、1961年5月16日つまり公式記録のボストーク2号の前に、つまり人類初の有人飛行のガガーリンに次いで、初の女性飛行士として彼女が挑んだというのだ。


以下、アキリとジョバンニのユディカ・コルディーリア兄弟による説をまとめたサイトいくつから引用させていただきました。

Judica-Cordiglia brothers - Wikipedia

 1950年代後半のことですが、イタリア人のユディカ・コルディーリア兄弟 (Judica-Cordiglia brothers) は実験的な無線傍受局をトリノ郊外に設置しました。トーレ・ベルトという場所にある、旧ドイツ軍の防空壕を改造したものでした。その無線傍受局にさまざまな装置を持ち込み、改造したりして、ソ連やアメリカの宇宙開発計画に関連する通信を傍受することに成功したと兄弟は主張しました。

1961年5月23日、兄弟は奇妙な通信を傍受しました。

動画の中で聞こえている声は、実際にユディカ・コルディーヤ兄弟が録音したものです。ソ連が宇宙開発計画で使っていた周波数から拾いました。この音声は地球の大気圏に再突入しようとしていた、世界初の女性宇宙飛行士のものだとされています。ソ連政府はこの事故疑惑について何も認めませんでした。

録音の中で女性飛行士は、故障した宇宙船が燃え上がるにつれ、「熱い」と叫んでいるそうです。世界初の女性宇宙飛行士は1963年6月に軌道飛行を成功させたテレシコワですが、事実であれば、その2年も前にもうひとり別の飛行士が存在していたことになります。

mankanshoku.blog.jp

 


3日後の1961年5月26日。ソ連タス通信は23日に大型衛星が大気圏に再突入し、燃え尽きたと発表した。人工衛星はバスほどの大きさだったという。

www.thevintagenews.com

 
“listen… listen! come in! come in… come in… talk to me! talk to me! I am hot… I am hot! what? forty- five? what? forty-five? fifty? yes… yes… breathing… breathing… oxygen… oxygen… I am hot… isn’t this dangerous? it’s all… yes… how is this? what? talk to me! how should I transmit? yes… what? our transmission begins now… forty-one… this way… yes… I feel hot… I feel hot… it’s all… it’s hot… I feel hot… I can see a flame… I can see a flame! I feel hot… I feel hot… thirty-two… thirty-two… forty-one… am I going to crash? yes… yes… I feel hot… I feel hot! I will re-enter…”
 
聞こえる・・・・聞こえる??・・・応答して!・・・応答して!・・・何とか言って・・・
熱い!熱い!何で?45℃?45?50?だからどうしたっていうの・・・しっかりして・・・苦しい・・・苦しい・・・酸素・・・酸素・・・熱い・・・これはまずいわ
いったいぜんたい、どうすればいいの??何なの??応答して!!
どうやって交信すればいいの??はい、なに?交信再開・・・41・・・これよ!
はい・・・熱い・・・熱い・・・どうしようもない・・・あつい・・・炎が見えてきた・・・炎が見える!熱い!・・・32・・・32・・・41・・・お終いなの?そんなことわかってるわ・・・熱い!熱い!でも再突入するしかない
 

ロシア語は理解できないから英語字幕から察するしかなく、微妙なニュアンスはわからない。不謹慎で顰蹙を買いそうだが、超意訳するとSMプレイで火あぶりと緊縛で攻められるM女の悶えにも聞こえなくはない。

 

また、映画「アポロ13」を観たものは記憶しているかもしれないが、大気圏突入時は交信はできない。ということはこの説は作り話なのかもしれない。

アポロの月面着陸もスタジオで壮大な撮影された壮大なねつ造だという説に代表される宇宙開発にまつわる陰謀説のひとつなのかもしれない。

 
ソユーズ1号の悲惨な事故もソ連崩壊後に、交信記録と地球に着地爆発炎上する映像なども合わせて詳細が明らかになった。
 
 
 
 
 

我に追いつく敵機なし 元パイロットが語る、SR-71ブラックバード操縦のスリル

SR-71 ブラックバード

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SR-71は、ロッキード社が開発しアメリカ空軍で採用された超音速・高高度戦略偵察機である。愛称はブラックバード(Blackbird)。実用ジェット機としては世界最速のマッハ3で飛行できた。

開発は、1950年代後半から1960年代にかけてロッキード社の「スカンクワークス」によって極秘に行われた。初飛行は1964年12月11日1967年5月31日実戦投入。沖縄・嘉手納飛行場にも配備された。その異様な形状と夜間に出撃することから、現地では「ハブ」(Habu)と呼ばれていた。

SR-71は弾より速く飛び、延べ4000発のミサイルから逃げ、敵の弾でかすり傷ひとつ追わなかった。

 

そんなSR-71パイロットの貴重な体験記である。

 

それは月のない晩だった。いつも通り訓練任務で太平洋上空を飛びながら、ふと「コックピットの中の照明を落としたら高度8万4000フィートから見る空の眺めはどんな風だろう?」と知りたくなった僕は、直線コースで帰路を急ぐ途中、照明を全部ゆっくり落としてみたことがある。ギラギラした光を消すと夜空が顔を現す...数秒でまた電気をつけてしまった。こんなことしてるのがジェットに知れたら、なんか罰が当たるんじゃないかと怖くなったのだ。しかし臆する気持ちは、夜空を見たい欲望には勝てない。僕は照明をまたおもむろに暗くした。

 

するとなんと窓の外に明るい光が見えるではないか。夜目に慣れると、その眩いものの正体は、きらきら空を渡る天の川だった。いつもは闇の空間が存在するだけの空に、今はきらめく星々の塊が所狭しと広がっている。その空のカンバスを数秒置きに流れ星が縫っていく。瞬きながら。それはまるで、音のない花火のディスプレイだった。

 

こんなことしてる場合じゃないぞ、計器に目を戻さなくちゃな...それは分かっていたので、しぶしぶ機内に注意を戻した。そしたら驚いたことに、照明は切ったままなのにコックピットの計器が全部見えるのだ。星の光に照らされて。鏡の中には、僕の金色の宇宙服が空の輝きに白熱灯のように照らされて不気味に光っていた。最後にもう一度だけ窓の外を盗み見る。

 

こんな超スピードでも、天空を前にするとまるで静止画だ。もっと偉大な力の輝きに囲まれる我々は、なんと小さいんだろう。そう思った瞬間、僕は機内でやるどんな任務よりも遥かに意味あるものの一部になった気がした。

続きは

www.gizmodo.jp

 

第二次大戦時の日本海軍の艦上偵察機「彩雲」(C6N1)コードネーム「MYRT」も俊足の偵察機で米海軍戦闘機を振り切ってこんな打電をした。

我に追いつく敵機なし

キャタピラークラブ

キャタピラークラブ

軍用機などから緊急脱出で落下傘降下して無事生き延びた者たちは、キャタピラークラブの会員として認定される。

キャタピラークラブは世界的な組織であり、落下傘メーカーより会員証と記念品が贈られる。

 

落下傘の生地は化学繊維が開発される前は絹で作られていた。ご存知の通り生糸は蚕の繭が原材料であり、天に召された無数の蚕つまり芋虫(キャタピラー)の犠牲から落下傘は作られているのである。

パイロットの身代わりに星になった芋虫たちに幸運を。

 

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驚くことに会員証を2枚持つ強者もいる。

参考 二度も緊急脱出をした男

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パイロットの話 「コックピットから その12」 EMERGENCY

パイロットの話

 

緊急状態は、通常状態でないときです。あたりまえの話ですが…。飛行機にとっては、日常茶飯事です。機体の故障ばかりではありません。天候の悪化や、パイロットの体調不良、地上支援施設の故障など様々な状況が考えられます。

緊急事態が、発生したときの原則は、
(1)飛行機の操縦を続けなさい
(2)状況を正確に判断して、適切な手段をとりなさい
(3)出来るだけ早く、着陸しなさい
先ずはこの3つがあります。

あなたは、今空を飛んでいます。突然、何らかの警報灯が点灯します。同時に警報音や、機体に変化が生じます。これはかなりラッキーです。なぜならば、警報灯が点灯するということは、設計段階から予想されていた故障だからです。このため妥当であろう手順が、すでに作られています。しかし一番厄介なのは、警報等などが点灯しないけど、「なんか変だなー」と、感じるときです。機体後方から「コツン」と音がしました。車ならその場に止まって、後方を確認しに行けばいいのですが、飛行機では不可能です。ここからは、パイロットの知識量と経験に基づく判断が、その後を左右します。

原則(1)は、極めてあたりまえのように感じますが、原因追求に頭がいってしまうと、つい忘れがちになります。実際に脚の警報灯の球切れで、それに全員が集中して落ちてしまった機体もあります。ですから、何が起こっても、先ずは飛行機の操縦に意識を向けていることが大切になります。

原則(2)は、簡単に書いてありますが、かなり難しい原則です。「コツン」と音がしたのを考えても、その原因は、山ほど考えられます。そしてその状況判断を間違えると、間違った対処手順を実施してしまいます。私の恥ずかしい経験では、射撃終了で目標から離脱したときに、発電機の警報灯が点灯しました。「ありゃー 電源故障だー」「発電機リセット!」「あれー?リセットできない」「完全に発電機壊れちゃった?」「もーやっぱ○○製品はだめだね!」なんて思っていると。「ん?なんでエンジン温度が低いの?」「あれぇーエンジン止まってるジャン!」「エンジン止まった警報等をつけて欲しいよねー」。

原則(3)は、状況はその後どうなるかわからないので、出来るだけ早く降りるのが得策です。このためパイロットは常に、ここで何か起こったら、どこに降りようかを考えています。言い換えれば自分がその日に飛ぶコース近くにある飛行場については事前に調べてあるのです。そして、何かあれば直ぐにそちらに機首を向けながら、状況の判断を始めます。

飛行機を操縦する上で大切なのは、あらゆる面で余裕を持つことです。知識・技量はもちろん、心も体も、そして時間にも余裕を持つことが、安全への第1歩です。ぎりぎりでやっていると、何か発生したときに直ぐに限界がきてしまいます。そして、状況を判断するときには、1つの原因に限定せずに可能性があるものは、全て念頭に置くべきです。
Knock It Off

さて、今回で私の連載も終了になります。1年間、中年パイロットたわごとに、お付き合いしていただきましたことを心から感謝いたします。

自由に大空を飛びまわる、この憧れは人類の永遠のテーマです。ライト兄弟が初めて飛んでから約100年、そして今、私たちはその一部分を手に入れました。しかし、まだまだ大空は限られた人々だけの特別な世界です。飛ぶためには、特殊な機械と、それを操る特別な技術が必要です。このために、多くの人々がこれを支えています。そしてあなたもその大事な1人なのです。

それでは、またの日まで…「R.T.B.」(Return To Base)

パイロットの話 「コックピットから その11」 Landing

パイロットの話

 

着陸は飛行の最終段階です。そして、飛行中一番天候の影響を受け、また飛行機の速度が極めて低く且つ地上に近いために、瞬時の判断の遅れなどが航空事故を引き起こす可能性が最も高い部分でもあるのです。これらの理由から、着陸はパイロットに瞬時の正確な判断が要求されます。

実は、パイロットは離陸する時から、着陸のことは考えています。なぜなら、一度飛び上がってしまえば、何があっても必ず着陸はセットになっているからです。他のミッションは飛行機の状況などで中止が可能ですが、着陸だけはパスできませんからー(笑)。

滑走路の手前約2キロメートル程度からが勝負になります。ここまでは、飛行機の種類や、飛行方法によって様々ですが、この先は、どんな飛行機でもほとんど同じです。それでは実際に着陸してみましょう。接地まで30秒前の地点からです。

ここまでに、自分の飛行機が、着陸できる形態になっているかを確認します。次に飛行場の状況を確認します。特に、気象状況、他機の状況は大切な事項です。これら全てを確認し終えて、着陸操作に専念します。

着陸のための滑走路への接近でやるべきことは、滑走路延長線上を、決められた降下角度で、決められた速度で飛行することです。ですから、この3つの条件さえ満足できれば、着陸は簡単です。しかし「そうは問屋が許しません」(かなり古い表現?)。それは、これら全てが関連しているからです。1つがズレたので直そうとすると、必ず他の2つが乱れるのです。その上、地上付近の風は複雑なので、常に飛行を邪魔しようと狙っています。
着陸する飛行機

1例を見てみましょう。正面に滑走路が見えます、風が右前方から吹いています。飛行機はだんだん左に流されます。そこで右に飛行機を戻すために、浅い右傾斜で飛行機を右に持っていきます。しかしそれと同時に飛行機の向きも右を向いてしまいます。この修正に今度は左ラダーを踏んで飛行機を滑走路方向に向けます。すると今度は揚力の減少と向かい風成分のために、思っていたよりも多くの高度低下を招きます。それを修正しようとして、機首を上げると今度は速度が減ってしまいます。そこでパワーを足します。このように着陸は、修正操舵の繰り返しになります。修正が遅れると、修正量が多くなって、失速ぎりぎりの速度で飛んでいる飛行機にとっては、より危険な状況に近づく可能性があります。

そうこうしていると、滑走路は目の前に迫ってきます、このままでは、かなり激しく滑走路に接地してしまうので、徐々に降下率を小さくして、できるだけソフトに接地させるように操舵します。この辺の操舵は、ほとんどパイロットの経験と勘です。自分のタイヤと滑走路の距離があとどれぐらい残っているかを肌で感じるのが大切で、その許される誤差は数センチメートル程度だと思います。10センチメートルも勘違いしていると、「ドシャン」と接地してしまいます。まあこれでも特に問題はないのですが、プロ意識が許しません(笑)。

接地したからといって安心してはいけません、飛行機はまだ時速300キロメートルぐらいありますので、不意に横風を受けたり、ちょっと操縦桿を引いたりするとまた飛び上がってしまいます。時速150キロメートル以下になるまでは飛行機です。そこで、早急に減速する必要があります。減速方法は色々ありますが、一番簡単なのが、車と同じブレーキです、しかし20トンの重さで時速300キロメートルの機体を止めるのはかなりのテクニックが必要です。残りの滑走路の長さを確認しながら、自分の飛行機の速度を徐々に減らしていきます。時速100キロメートルを切ればひと安心です。ちなみにブレーキは、左右別々です。右ペダルは右ブレーキ、左ペダルは左ブレーキです。このためパイロットは、飛行機を滑走路上で直進させるために、左右のブレーキをちょうどいい具合に加減しています。すごいでしょ?(笑)。

着陸で、着陸操舵よりも大事なことがあります。それは着陸復行です。着陸をやめて、再度着陸進入するための操作です。この決心は早ければ早いほど安全です。着陸に何らかの疑問や不安を感じたら、直ちに着陸復行して着陸をやり直すべきです。ここで迷うのが一番危険です、着陸しようかどうしようか迷ったら着陸中止!こうパイロットは決めています。これが、安全への第一歩です。
Final

パイロットの話 「コックピットから その10」 Take Off

パイロットの話

 

今回は大空への第1歩である離陸についてのお話です。

離陸は飛行機を操縦する上では、比較的やさしいい操舵になります。しかし、その代わりにパイロットには多くの即断が要求されます。それでは実際に、戦闘機を使って離陸してみましょう。

滑走路進入許可をもらって、ゆっくり滑走路に進入します。この時には着陸しようとしている飛行機がいないか、そして滑走路上に障害物などはないかを、自分の目で確認します。またここで大切なのは、出来るだけ滑走路を長く使えるように、無意味に前進しないことです。通常軽装備の戦闘機は4~500メートルで離陸してしまいます。大型民間機でも2,000メートルもあれば離陸します。しかし普通滑走路は3,000メートルもあります。それなのに何故、滑走路は長く使える様に、進入するのでしょう?それは、離陸を断念して、停止するための滑走路長を確保するためで、飛行機は離陸するのに必要な長さの倍以上の距離が停止するためには必要になるからです。

滑走路に進入して停止したら、しっかりブレーキを踏んで、針路計や磁気コンパスを確認します。次に、エンジンチェックを実施します。先ずは、手順書に示されているパワーまでスロットルを進めます。エンジンの計器を素早く読み取って、正常に動いているかどうか確認します。エンジンチェック中に、電気系統、エアコン系統なども確認します。さーって 飛行機はOKなようです。そして管制塔から離陸許可が来ました。離陸です。

再度前方に障害物などがないか確認します。指定されたパワーにして、ブレーキを離します。ゆっくり飛行機は動き始めます。動き始めたのを確認したら、100パーセントパワーにします。このときにも、エンジン計器を確認するのを忘れてはいけません。100パーセントパワーにすると、急に飛行機は加速し始めます。そして必要ならば、スロットルをアフターバーナ領域へ進めます。急激な加速感と、エンジンノズル計器の開きが、アフターバーナへの正常点火を教えてくれます。ブレーキを離してから約5秒後、すでに飛行機は、時速100キロメートルを軽く超えています。空中まであと数秒。

しかしこの付近で飛行機は一番不安定なのです。滑走中は3輪車、そして空中へ飛び出せば飛行機、その変化点なのです。ここで最も影響するのが、風です。特に横風は地上を離れようとしている飛行機にとっては、「嫌がらせ」以外の何ものでもありません。僅か数メートルの横風でも、この場所ではパイロットを真剣にさせるのに十分です。

また、戦闘機にとってはこの地点が大きな決心ポイントです。これまでに機体に異常があれば、離陸を中止して、残滑走路上で止まることを決心し、この点を過ぎてしまえば、何があっても飛び上がらなくてはいけません。(厳密には、もうちょっと複雑な計算が必要ですが…)
上昇する飛行機

さて 離陸速度が近づきました、ゆっくりと機首を引き上げて、離陸姿勢にします。この操作を急激にしたり、過度にすると、思いもかけない事態が発生しますので、細心の注意が必要です。離陸姿勢を維持していると、自然に飛行機は浮きあがります。浮揚を確認して、脚とフラップを格納します。その間も、飛行機はどんどん加速していきます。そのままの姿勢では、滑走路エンド上空で、音速を超えてしまします(笑)そこで、決められた上昇速度になるように、機首をさらに上げて速度を維持するようにします。しかしながら今の戦闘機は、膨大な推力があります。速度を維持しようとすると、機首がどんどん上がって、最終的には垂直になってしまいます。搭載物の無いF-2などは真上を向いても加速していきます。そこで適当なところで、アフターバーナをキャンセルして 音速の0.9倍ぐらいの速度で上昇するのが良いでしょう。

これが一連の離陸になりますが、ブレーキを離してから15秒程で、全ての離陸操作が終わります。この間に、パイロットは環境の変化を素早く感じ取って、状況に応じた操舵をしなくてはいけません。そして、この間一瞬も気を緩めることができないのです。ある程度高度が取れれば、やっと、ちょっとひと安心です。

パイロットの話 「コックピットから その9」 STALL

パイロットの話

 

今回は、お約束どおり失速のお話です。通常の会話で「失速しちゃったよー」というのは、それまでのペースが急に落ちた時や、なんかやる気が無くなった時などに使いますが、飛行機の失速はそんなに甘いものではありません。イメージとしては、高速道路を車で快適に走っていて、ある速度を切ると、突然道路がぬかるみになってしまうような感じです。

飛行機は、皆さんが想像されているよりも、空気にしっかりと支えられています。普通に飛んでいる限り、飛行機を支えている空気と、車が走っている道路と感覚的違いはありません。むしろ空気の方が安定していて揺れもありません。あたかも 平らな氷の上を滑っているような感じです。しかし一旦ある速度を切ると、それまでしっかりと飛行機を支えていた空気が、突然普通の空気になってしまうのです。こうなると飛行機はただの金属の塊です。地球に向けて一直線に落ちていきます。

それでは実際に、飛行機を失速させてみましょう。基本的には速度を減らしていけば良いのですが、失速後のことを考えると、飛行機の形態、エンジンの推力、補助翼などの中立位置、失速した瞬間の姿勢、残燃料量など、多くの条件を我々に有利にしておかなくてはいけません。これを間違えると取り返しがつかなくなる可能性があります。それと当然十分な高度が必要です。

予想失速速度の1.3倍ぐらいの速度からスタートします。通常はエンジンを絞っていけば徐々に減速していきます。先ず現れる現象は、バフェットと呼ばれる現象です。主翼で剥がれた空気が、胴体や水平尾翼に当たって、機体全体を振動させます。この大きさは、飛行機によって異なっていて、心地よい振動から、飛行機の構造物を壊してしまうような振動まで様々です。一般的には失速速度の1割程度前から発生して失速まで継続します。
バフェット現象

「おーこれがバフェットね!おもしろいじゃん!」ってなことを考えていると、失速は突然やってきます。失速そのものの現象は、単に機首が真っ直ぐ下に落ちるものから、機首が横に流れて激しい回転運動を始めるものまで、千差万別です。いずれにせよ一番の問題点は、突然来ることです。「ありゃー」などと思っている時間的余裕はありません、直ぐに定められた手順で回復操舵をしないといけません。5秒も迷っていれば東京タワーの高さぐらいは簡単に落ちてしまいます。

もし、ここで高度に余裕があって、さらに探究心があるならば、さらに操縦桿を引き続けます。おまけで操縦桿を左右どちらかに最大操舵して、反対側のラダ-を踏み込みます。すると「ゴー」という音と共に激しく揺られて、上下左右何がなんだかわからないような運動に入ります。そこで手足を緩めても、同じ激しい運動が続くようなら、スピンモードに入っています。通常スピンは、自然現象として安定しています。木の葉がゆらゆらと揺れながら落ちて行くのと同じです。違いは木の葉が数グラムなのに対して、飛行機は数十トンなだけです(笑)。スピンは、何も対応しなければそのまま継続します。このとき計器類を見ると、姿勢指示器はぐるぐる回り、高度計は読み取れない速度で減少し、速度計だけは極めて低い速度で安定しています。運動が激しい場合は飛行機の構造を破壊しまので適当な所で止めるのが得策です。

スピンモードからの回復操舵は、飛行機によって全く異なります。そのため十分な予習が必要です。スピンを抜け出すと、自動回転運動というのに入ります。これもスピンだと思って、さらに回復操舵をしてしまうと、好ましくないモードに入りますので、正確な状況判定が必要です。自動回転運動に入ると、速度が増加してきて、失速領域から自然に抜け出すことができます。

失速自体は、それほど危険なモードではありませんが、離陸直後や着陸前などは、失速速度の2~3割程度の余裕速度しかありません。ここで何らかの原因で、ちょっとでも減速してしまうと失速してしまいます。ですから、パイロットは離陸後3分、着陸前5分は最高に緊張しています。うーん 今回はちょっと難しかったかな?先月号の予告どおり予習していました?(笑)