パイロットの話 「コックピットから その10」 Take Off

 

今回は大空への第1歩である離陸についてのお話です。

離陸は飛行機を操縦する上では、比較的やさしいい操舵になります。しかし、その代わりにパイロットには多くの即断が要求されます。それでは実際に、戦闘機を使って離陸してみましょう。

滑走路進入許可をもらって、ゆっくり滑走路に進入します。この時には着陸しようとしている飛行機がいないか、そして滑走路上に障害物などはないかを、自分の目で確認します。またここで大切なのは、出来るだけ滑走路を長く使えるように、無意味に前進しないことです。通常軽装備の戦闘機は4~500メートルで離陸してしまいます。大型民間機でも2,000メートルもあれば離陸します。しかし普通滑走路は3,000メートルもあります。それなのに何故、滑走路は長く使える様に、進入するのでしょう?それは、離陸を断念して、停止するための滑走路長を確保するためで、飛行機は離陸するのに必要な長さの倍以上の距離が停止するためには必要になるからです。

滑走路に進入して停止したら、しっかりブレーキを踏んで、針路計や磁気コンパスを確認します。次に、エンジンチェックを実施します。先ずは、手順書に示されているパワーまでスロットルを進めます。エンジンの計器を素早く読み取って、正常に動いているかどうか確認します。エンジンチェック中に、電気系統、エアコン系統なども確認します。さーって 飛行機はOKなようです。そして管制塔から離陸許可が来ました。離陸です。

再度前方に障害物などがないか確認します。指定されたパワーにして、ブレーキを離します。ゆっくり飛行機は動き始めます。動き始めたのを確認したら、100パーセントパワーにします。このときにも、エンジン計器を確認するのを忘れてはいけません。100パーセントパワーにすると、急に飛行機は加速し始めます。そして必要ならば、スロットルをアフターバーナ領域へ進めます。急激な加速感と、エンジンノズル計器の開きが、アフターバーナへの正常点火を教えてくれます。ブレーキを離してから約5秒後、すでに飛行機は、時速100キロメートルを軽く超えています。空中まであと数秒。

しかしこの付近で飛行機は一番不安定なのです。滑走中は3輪車、そして空中へ飛び出せば飛行機、その変化点なのです。ここで最も影響するのが、風です。特に横風は地上を離れようとしている飛行機にとっては、「嫌がらせ」以外の何ものでもありません。僅か数メートルの横風でも、この場所ではパイロットを真剣にさせるのに十分です。

また、戦闘機にとってはこの地点が大きな決心ポイントです。これまでに機体に異常があれば、離陸を中止して、残滑走路上で止まることを決心し、この点を過ぎてしまえば、何があっても飛び上がらなくてはいけません。(厳密には、もうちょっと複雑な計算が必要ですが…)
上昇する飛行機

さて 離陸速度が近づきました、ゆっくりと機首を引き上げて、離陸姿勢にします。この操作を急激にしたり、過度にすると、思いもかけない事態が発生しますので、細心の注意が必要です。離陸姿勢を維持していると、自然に飛行機は浮きあがります。浮揚を確認して、脚とフラップを格納します。その間も、飛行機はどんどん加速していきます。そのままの姿勢では、滑走路エンド上空で、音速を超えてしまします(笑)そこで、決められた上昇速度になるように、機首をさらに上げて速度を維持するようにします。しかしながら今の戦闘機は、膨大な推力があります。速度を維持しようとすると、機首がどんどん上がって、最終的には垂直になってしまいます。搭載物の無いF-2などは真上を向いても加速していきます。そこで適当なところで、アフターバーナをキャンセルして 音速の0.9倍ぐらいの速度で上昇するのが良いでしょう。

これが一連の離陸になりますが、ブレーキを離してから15秒程で、全ての離陸操作が終わります。この間に、パイロットは環境の変化を素早く感じ取って、状況に応じた操舵をしなくてはいけません。そして、この間一瞬も気を緩めることができないのです。ある程度高度が取れれば、やっと、ちょっとひと安心です。